当社グループは、長期ビジョンにおける3つの戦略方針(「今までの概念を覆す」「リーディングカンパニーの伝統を活かす」「あらたなチャンスに挑戦」)及びESG推進方針(「E 地球環境に徹底的に貢献する」「S あらゆるステークホルダーと共生する」「G 持続可能な信頼される企業であり続ける」)のもと、以下のような戦略課題などに取り組んでまいります。
当社グループは、お客様にとって最適な「軽くて、強くて、使いよい」ツールを環境の変化に適応した形で提供し続けます。たとえば、主力の自動車業界では、「自動運転技術」「EV技術」による技術革新が進む一方で技術者の高齢化や人手不足に伴う生産性や企業競争力などへの影響が問題視されており、作業現場のニーズはより多様化することが予測されます。これに対し、新しい材料や構造・機構に関する技術を用いるなど、安全で使う人と環境にやさしいツールを進化させ続け、多様性を認め合う持続可能な社会の実現を目指してまいります。
当社グループは、安全・安心に対する社会的要求の高まりにより、人作業や作業情報などの一元管理が進展することを見据え、「工具(ハードウエア)」「ソフトウエア」「サービス」の三要素で構成する「TRASAS」シリーズをはじめとするIoT技術を用いたツールを展開しております。とくに昨今、より効果的かつ効率的なコンプライアンス強化が求められるなか、厳格な工具管理を要する航空宇宙産業やMRO(Maintenance Repair Overhaul)市場などに対し、使用履歴管理による紛失抑制や紛失した際の工具の探索に貢献するRFID搭載工具「nepros ID」シリーズを展開し、作業管理体制強化や効率化による新たな価値を提供してまいります。
当社グループでは、「KTC vision 2030」を支えるためのものづくり革新を進めており、人とロボットそれぞれの長所を活かした協働環境の運用を目指しております。具体的には、脱着などの単純な繰り返し作業は協働型ロボットが行い、人はより付加価値の高い作業へシフトいたします。さらに、生産各工程の新規設備を活かし、とくに「nepros」「nepros ID」製品をベースとした各成長戦略の実現に向けて能力増強を図るとともに、生産拠点の最適化や地政学リスクへの対応を含めものづくりを中心としたサプライチェーンマネジメントの強化に取り組んでまいります。
当社グループの事業活動を通じた社会課題への貢献に向け、ESGを軸としたサステナビリティへの取り組みを深化させてまいります。たとえば、気候変動の課題に対し、温室効果ガス排出量の削減に向けたエネルギーに関する取り組み(省エネルギー化や再生可能エネルギーの利用推進など)とコストダウンを両立させるなど、グループ全体の最適化を図り、環境に配慮したお客様に選ばれる企業を目指してまいります。
また、事業を維持・向上、変革させる源泉は、人材であります。多様な価値観への社会的な変化を背景に、多様な人材の登用、一人ひとりの成長と能力発揮などを目的とした人材への投資を行い、「人を中心に置きながら人に依存しない体制を築き上げる」など、社員がより「KTCで働いてよかった」と思える会社を実現させ当社グループの成長につなげてまいります。
2025年5月以降の各種適時開示にて公表しておりますとおり、当社連結子会社である北陸ケーティシーツール株式会社(以下「北陸KTC」と言います。)において、不適切な会計処理の疑義が確認され、事実関係の更なる調査、原因の究明、再発防止の徹底を目的として特別調査委員会を設置し、調査を行いました。
その結果、製品や仕掛品、原材料や貯蔵品等の過大計上による不適切な会計処理が判明いたしました。不正に至った主な原因は、親会社からの営業黒字達成のプレッシャー、在庫管理に関する内部統制の不備、北陸KTCの経営に対する戦略的な検討の不足など、コーポレート・ガバナンスの不備によるものと分析しております。
現在、上記の原因分析結果を踏まえ、(1)北陸KTCにおける内部統制の整備・運用、(2)グループとしての一体感の醸成を主眼とした北陸KTCの位置づけの見直し、(3)ガバナンスの再構築、(4)上場会社としての信頼性確保に向けた全社的な意識改革を再発防止策の柱として位置付け、具体的な取り組みを策定し、運用を開始しております。
策定した再発防止策を着実に遂行することで、原因となったコーポレート・ガバナンスを強化し、健全な経営体制を構築してまいります。
株主の皆さまには、多大なるご心配とご迷惑をお掛けいたしましたことを、改めて深くお詫び申し上げますとともに、今後ともより一層のご支援、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。